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【WHITE ALBUM2】和泉千晶スレ ネコ2匹目 (540)

1 名無しオンライン 2012/06/05(火) 02:01:49.17 ID:8hPlc8Ss0
和泉 千晶(いずみ ちあき)

峰城大学文学部3年。
誕生日は8月6日

窓際の席どころか、ゼミ室に寝袋を持ち込んで熟睡している、
怠惰、無気力、依存症を絵に描いたような典型的な大学生。
要領がよく甘え上手なため、今までなんとか進級してきたが、
最近はさすがにゼミのレポートが増えてきたため進級が危ぶまれている。
実は興味を持ったことには寝食を忘れ熱中する性格らしいが、
誰もその姿を見たことがないため真偽のほどは定かではない。

千変万化する彼女の魅力について語ろう

中身は彩世ゆうが有力

★前スレ
【WHITE ALBUM2】和泉千晶スレ ねこ一匹目
Leaf・key (BBSPINK)

140 名無しさんだよもん 2013/03/09(土) 23:53:31.84 ID:6QE8JUTZ0
>>136
ワロて頂き何より

かずさスレへの投稿も考えましたが、書き込み多いスレに長文投稿は
まずかろう&雪菜True後ですし

とりあえず、千晶登場まで

141 名無しさんだよもん 2013/03/10(日) 00:15:33.26 ID:d1GSJ4FO0
かずさはやっぱ糖分過剰摂取じゃないとなw
千晶がとういう格好してるのか気になる

142 名無しさんだよもん 2013/03/10(日) 00:22:29.53 ID:xkoDBqzP0
「あ、瀬ノ内さん。今日は…」
 板倉記者が口を開いたところを、すかさず千晶は自分のセリフを重ねてつぶす。
 千晶はいつもこの手でこの小うるさい雑誌記者をはぐらかしていた。舞台の間の取り方を逆用したワザである。
「ああ、冬馬さん。わたし。クラス別だったけど学年同じだったよ。でも覚えてないよね。瀬能千晶っていうんだけど」

 突然見知らぬ学友に話しかけられ、今度は冬馬が泡を食う。
「え、ええ?」
 かまわず千晶は続ける。
「ひょっとして、今の舞台見ていた? ごめんごめん、全然気付かなかった」
 そういう千晶の顔は悪戯を見つけられた少年のものだった。だが、その目はひそかにかずさの反応を注意深く見ている。
「あ、いや、今日は別件で…」
 その答えを聞き、千晶は軽い舌うちとともにぼやいた。
「やっぱりか…、ちぇ。春希も雪菜もチケット渡したのに見に来なかったし…」
 そのつぶやきは誰にも聞きとれないほど小さかった。しかし、ピアニストであるかずさの耳にははっきりと聞こえた。
「…春希たちの知り合い?」
 かずさの声のトーンが微妙に変わったのを千晶は聞き逃さない。
「うん、春希とは何度か寝たよ」
「…っ!」
「わたしはベッドで春希は床で」
「………」

143 名無しさんだよもん 2013/03/10(日) 00:24:07.28 ID:xkoDBqzP0
 その言葉に、かずさは不意をうたれる。急になれなれしく名前で呼ばれたことに対してではない。
 その口調、しぐさがまるで…かずさの不倶戴天の親友のまさにそれであったから。
「???っ…あ、ああ…」
 かずさは思わず肯定の返事を返してしまった。
「『よかったぁ。じゃ、絶対絶対来てよね。…来てくれないとちょっとだけ傷ついちゃうかもなぁ…』」
 そう言って、千晶はかずさの手に強引にチケットを2枚握らせる。
 その際の演技も完璧に『小木曽雪菜』のそれであった。かずさは混乱のあまり何も反抗できずにチケットを受け取る。
「『じゃあ、見終わったらまたこの場所で会おうね』」
「………、あ、うん…」
 かずさは呆気にとられ、こくりとうなずくばかりであった。

 その後の事はかずさはよく覚えていない。
 たしか、瀬能千晶と名乗るあの新人女優は板倉記者にもチケットを渡して去っていった。
 板倉記者からはいろいろと質問されたが、何も答えられなかった。ただ、一緒に翌日の舞台を見に行く約束だけして別れた。

 自分と峰城大付の同学年ということだが、もちろん覚えはない。『春希』と『雪菜』を名前で呼ぶあの人物は何者?
 ただの大学とかの同窓生? あの時見せた演技は何? ただのモノマネ上手?

 いろいろ考えたけど埒があくはずもない。
 かずさは考えるのをやめた。明日、あの瀬能千晶という女に直接聞けばわかることだ。

144 名無しさんだよもん 2013/03/10(日) 00:28:06.95 ID:xkoDBqzP0
**********5/13(木)「シアターモーラス」『届かない恋』開演前

「明日の講演後このコ連れて来て。そしたら取材でも何でも応じるよ」
 瀬之内晶はそう言って板倉記者にチケットを握らせると、あっという間に雑踏へ消え失せてしまった。
 あとに残されたかずさと板倉記者だが、かずさのほうは呆気にとられたようすで、板倉記者が何を話しかけても生返事しか返ってこなかった。
 仕方なく、明日会う約束だけしてその場は別れた板倉記者だったが、かずさが来るかは半信半疑だった。久しぶりに会った学友?にしては様子がおかしかったが…

 翌日の講演開始10分前。待ち合わせは20分前だったから、もう10分の遅刻だ。
「…また騙されたかも?」
 シアターモーラスの入口で待ちつつ、そうぼやいた板倉であったが、程なく彼女は現れた。
「…やあ、板倉さん」
「はいはい、かずささんこんにちは〜。今日はお付き合いありがとうございます。いやいや、本日は僭越ながら御同席させていただきますので…」
 かずさが現れた嬉しさのあまり、忽ちテンションを上げる板倉であったが、かずさはそんな板倉がまるで視界に入っていないように、
「…行くか…」
 と言うと、すたすた劇場に脚を進めた。
 訝しげな表情のまま付いていく板倉であったが、彼女の記者のカンは、
『ここは機会を待て、じきに大ネタが来る』
 と告げていた。

「これ、どんな劇なの?」

145 名無しさんだよもん 2013/03/10(日) 00:30:14.26 ID:xkoDBqzP0
 間もなく舞台が始まった。オープニングニングに流れたのは「White Album」。かずさにとっても懐かしい曲だ。
 メジャーデビューを夢見る高校生、西村和希が二人のヒロインをバンドに引き込もうとするシーン…前半はラブコメディ色が強い

「俺と合わせられるのはお前しかいない!」
「だから質問に答えろ」
「俺みたいなヘタクソをフォローするには、お前くらいの腕がないと不可能なんだよ!」

 開演後、しばらくして…2人目のヒロイン『冬木榛名』登場のあたりから…板倉はかずさの異変に気づいた。
 最初はギャグシーンで他の観客と同じようにクスクス笑っていたかずさが、やがてクスリとも笑わなくなったばかりか、だんだんと表情を強ばらせている。

「…あの…かずささん?」
「…まさ…か……っ」

 かずさは、気付きつつあった。
 この劇は…彼女と春希、そして雪菜の関係をモデルにしている。いや、三人の性格から関係、あの日々までを調べ尽くし、えぐり出している。
 なぜ? なぜこんなことまであの女は知っている? どうやって知った? 誰から聞いた?
 …そして、なぜ、自分にこの劇を見せようとした?
 かずさは舞台の上の『冬木榛名』から、もはや目を逸らすことができなかった。
 榛名の演技は、かずさにとってあたかも呪いの鏡であり、かずさは自分の虚像たる榛名に存在を突き崩されつつあった。

146 名無しさんだよもん 2013/03/10(日) 00:32:28.63 ID:xkoDBqzP0
 舞台はコンテストの直前、控え室での和希と雪音。雪音が和希にキスをねだるシーンだ。

「じゃ、もう一度目をつぶるので考えてみてください。制限時間は30秒!」
「え? え? え?」
「ん〜っ!」
「目をつぶったのはわかったけどさ…その背延びは何?」
「残り20秒〜」
「ゆ、雪音…?」
「残り10秒〜」
「10秒はやっ!?」
「………」
「………」
「残り15秒〜」
「増えてる!?」

「…っ!」
 観客がどっと笑ったその時、かずさの口から漏れたのは笑いではなく驚きの絡んだ呻き声であった。
 気付いたのは板倉だけであった。彼女がかずさの視線の先を追うと、その先には舞台袖に控える千晶がいた。

 千晶はそんなかずさの様子を観察して悦に入っていた。

147 名無しさんだよもん 2013/03/10(日) 00:35:53.17 ID:d1GSJ4FO0
終わってなかったのかよw
気持ちはわかるがあまり一気に投下すると何だから焦らず日を跨いだ方がいいんじゃない?
どうせ過疎ってるんだし
あまりに長文すぎると読むこと自体拒絶したくなるわ
何より連投規制で引っ掛かる可能性が高くなる(まして書き込みの少なくなる深夜)

148 名無しさんだよもん 2013/03/10(日) 00:40:25.77 ID:xkoDBqzP0
>>147
 ありがとう。
 明日にします。

149 名無しさんだよもん 2013/03/10(日) 23:28:55.29 ID:xkoDBqzP0
こんばんは
昨日は長文連投失礼。

もうラスト以外できているけど、ペース配分して投稿します。
今日は、『届かない恋』の終幕まで。

ちなみに、雪菜True後の後日談ですので、千晶Trueの『届かない恋』とは内容異なる
(千晶入れ込んでない、雪音に千晶入ってない等)ってことでご了承ください。

150 名無しさんだよもん 2013/03/10(日) 23:31:16.02 ID:xkoDBqzP0
「イチャイチャしたりジタバタしたり忙しいな」
「うぇっ!? ふ、冬木?」

 ガタンッ!
「えっ!? かずささん!?」
 突然立ち上がったかずさに驚いたのは板倉だった。かずさの顔からは血の気が失せていた。

「ごめんな… それから、今日まで本当にありがとう」
「…まだ終わってないだろ。最後の、一番めんどくさい本番が残ってる」
「そうだな…これが最後だ」
「………っ」
「行こうか、冬木。雪音が待ってる」
「………西村」
「ん…?」
 『冬木榛名』が『西村和希』に歩みを進める。

「…やめ…ろ…」
 かずさには次の『榛名』の行動がわかっていたから、抗議の声を漏らさざるを得なかった。
 しかし、かずさの弱々しい声は聞き入れられず、『榛名』は『和希』に唇をよせる。

151 名無しさんだよもん 2013/03/10(日) 23:32:46.33 ID:xkoDBqzP0
**********幕間

「…かずささん?」
 板倉に話しかけられてかずさは我に返った。
 『榛名』のキスシーンから第一幕の終わりまで、結局かずさはずっと立ちっぱなしだった。

「…行く…」
 そうつぶやいたかずさに板倉は聞き返した。
「?…おトイレですか?」
「あの女のとこだよ!」
「えっ? かずささん?」

 板倉を押しのけて出ようとするかずさであったが、座っていたのは端が詰まった席であったため、板倉や他の観客が邪魔になりすぐに出られない。
 無理に出ようとしてつんのめったかずさを板倉は止めた。

「かずささん! まだ一幕目が終わっただけで、すぐ次が始まりますよ! まだ瀬之内さんには会えませんってば!」
 そう諭されて、我に返り腰を下ろすかずさ。
 しかし、体は座しつつもその目は怒りと苛立ちに満ちており、今にも舞台に飛び上がりそうであった。

 何で? 何を怒っているの?

152 名無しさんだよもん 2013/03/10(日) 23:33:26.67 ID:xkoDBqzP0
「後悔…するぞ…」
「後悔なんて…し飽きた…」

 暗転する舞台

「いつもの約束…守れよ?」
「榛名…」
「雪音には…内緒だぞ」

 雪音は、ふたりの逢瀬に気付きつつも、カタチだけの「遠距離恋愛の彼氏と彼女」の関係にすがりつく。
 いや、カタチだけの廃墟同然の関係にすがり、崩壊だけ先延ばしにするような日々を送る。

「『もぉ〜、ひどいよねぇ〜。誕生日にまで仕事入れられて〜』」
「『てなわけで、和希くんゴメン! 電話してくれてうれしかったよ! じゃあ…』」
 場面が明転し、雪音の自室。電話の切れる音ともに枕に伏し、独り涙をこらえる雪音。
 くすんだ色の空虚な部屋から「会えない二人」のハリボテのような関係がにじみ出ていた。
 枕元に置かれた写真立ての中にだけ、3人の色褪せない姿がある。

 …優しさ故、会えない日々の中で一人待ち続ける雪音
 …臆病さ故、和希の想いから逃げ続ける榛名

153 名無しさんだよもん 2013/03/10(日) 23:34:36.93 ID:xkoDBqzP0
 そして、最終幕。
 
 そんな嘘に塗り固められた日々に疲れた和希がふと、榛名のピアノを聞きたいと漏らしたところから話は終盤に向かう。
 ブランクとスランプに喘ぎ、自暴自棄になって和希まで拒絶して引きこもってしまった榛名。その危機を救う為に現れたのは他でもない、雪音であった。

「…何のために来た…? わたしを罵りに来たのか? それとも…憐れみに来てくれたとでも言うのか?」
 雪音を拒絶する榛名。しかし、雪音は引き下がらない。

「どうしてそんなこと…そんなこと、どうして言うの…全部あなたが臆病なのが悪いんじゃない!」
 ぱしっ。平手の音が響く。
「勝手な…ことを言うな…あいつの…想いも夢も、尊敬も、焦りも、嫉妬も、彼女の座もずっと独り占めしておいて…今さら被害者ですよってしゃしゃり出てくるなっ」
 ぱしんっ。榛名も負けじと返す。

 平手打ちとともにお互いの本音をぶつけ合い、いつしか和解する二人。
 
「おまじないだよ」
 別れ際に雪音が榛名に渡したのは、あのコンテストの控え室で和希から受け取り、以来片時も離すことがなかった、和希との絆のギターピックだった。

「おまじないだ」
 そして、和希からは、キスを

154 名無しさんだよもん 2013/03/10(日) 23:35:42.84 ID:xkoDBqzP0
 二人の為に身を引く決意を固める榛名。
 榛名がピアノを取り戻したことを知った母親からの留学の薦めを承け、誰にも知らせずウィーンへ去ろうとする。
 飛行機が起つ直前でその事を知り、空港へと向かう和希と雪音。
 雪による遅延で奇跡的に3人は出会うことができた。
 再会を誓い、和希と雪音は榛名を見送る。しかし、榛名はもう二人の元に戻らないと心に決めていた。

「あれ?」
「何か…ポケットに…」
「これ…和希のギターピック…」

 その意味に愕然として飛行機に向かい榛名の名を叫ぶ雪音。その雪音に寄り添う和希。
 二人の姿を照らしていたスポットライトが徐々に絞られ、舞台は暗転し、最終幕は閉じられた。
 スポットライトが最後に照らしたのは二人の繋がれた手、それは二人の未来を暗示していた。

 拍手に包まれる劇場にかずさの慟哭が響き渡った。

155 名無しさんだよもん 2013/03/10(日) 23:44:48.27 ID:xkoDBqzP0
投下完了。
明日、明後日はかずさvs千晶です。

156 名無しさんだよもん 2013/03/11(月) 01:03:49.07 ID:IkWb9Us60
>>142-146
いきなりかずさに馴れ馴れしすぎるような>千晶
千晶演じる雪菜に騙くらかされうなずいてしまうかずさ
バンドを組んで友情を深めた三人が三角関係にってとこでちょっと反応欲しかった気も
かずさの前で榛名を演じニヤニヤする千晶、美味しいぞw

157 名無しさんだよもん 2013/03/11(月) 01:07:49.89 ID:w4CbuvwJ0
あら随分大作
ご苦労さん
でもこのスレ的には雪菜End後より、千晶End後の方が需要があったような…

158 名無しさんだよもん 2013/03/11(月) 01:14:47.59 ID:IkWb9Us60
>>150-154
ん〜もう少しかずさの蒼白度(?)が欲しかったかなーと
それこそ顔面蒼白で声も出せないみたいな
て、なぜに張り手合戦!?まさか千晶はその後もずっと観察し続けてたとか?
ピック、たしか雪音は返さなかったんだよな
次はかずさが楽屋へ乗り込んで派手に張り手合戦、と読んだw

159 名無しさんだよもん 2013/03/11(月) 21:03:04.88 ID:TEnqWxrg0
>>156
>>158
感想サンクスです。
スマホからで恐縮ですが、千晶さんにインタビュー

>>千晶さん。かずささんに馴れ馴れしくないですか?
「あはは。そこは賭けだったなぁ。向こうは今をときめくヒトだし、こちらも時間ない中、最終日前にかずささんの『演技指導』受けたかったしね
 …決め手は春希と雪菜の名前出した時の反応かな。『かずさの事も知っている二人の共通の友人』って誤解させて切り込むコトにした」

>>バンド組んで三角関係って、かずささんとってはすごくトラウマですよね。かずささんの反応薄くなかったですか?
「ん〜。確かに。1幕より三角関係露わな2、3幕の方が反応薄かったよねぇ? 事実から離れてるからかな? 閉幕時の声はでかかったけど…何でかなぁ?」

>>どうして張り手合戦?
「あれ? 三角関係の争いで張り手合戦って定番じゃない? いやさ、雪音はともかく榛名ピアニストなのに張り手いいのかわかんないけどさ」

>>雪音ちゃん、ピックを一時手放しちゃうんですね。
「うん。『和希から離れてもピックは返さない雪音』も構想したけども、雪音には愛や友情のために誓いを犠牲にできる強さがあると思った」

「さて、なんか控え室で待っていても来そうにないし。ちょっと行ってきま〜す」
 

160 名無しさんだよもん 2013/03/11(月) 22:25:30.42 ID:TEnqWxrg0
**********「シアターモーラス」『届かない恋』閉幕後、場外のベンチにて

「…かずささん! …大丈夫ですか? しっかりして下さい!」
「………ううぅ…うう…」
 板倉は困り果てた。閉幕後、板倉が何度呼びかけてもかずさはベンチにうずくまり、立ち上がろうとしない。
 
 そこへ現れたのは千晶だった。
「いやぁ、そんなに泣かれるほど感動されると役者冥利に尽きるねぇ…」
「…っ!」
 かずさが顔を上げ、涙も拭かず、憤怒の視線を千晶に向ける。
 千晶は鋭い睨みにもひるむことなく、手にしたボストンバッグを床に置くと、飄々と芝居じみた語り口を始めた。
 その口調は雪菜のものを模していた。いや、意図的に慇懃無礼な言葉を選んでおり、彼女を知るものなら怒り出すように意図されたバッドコピーだった。
「いやいや…『本日は脚本、私、瀬ノ内晶。本名、和泉千晶の劇『届かない恋』ご覧いただき誠にありがとうございました。
 甚く嘆称いただけ何よりです。この度はご感想を頂戴したく参りました』」
 それが、かずさの逆鱗に触れた。

 …わたしの前でその女のマネをするな…
 ゆらりとかずさが立ち上がった。そして、

 バシンッ! …どさっ

161 名無しさんだよもん 2013/03/11(月) 22:27:07.36 ID:TEnqWxrg0
「ピアニストだから本能的に手をかばう、なんて都市伝説だね。フルパワーじゃん。
 それに、昨日も触って思ったけど鍛えられた硬い手指。鉤爪みたいだね。弱々しい音ばかりの平手打ちとは月とスッポンだ」
「まさか…あなた…」
 板倉は悟った。さっきの吹き飛び方はいくらなんでもおかしかった。手も予想していたように素早く顔を完全にガードしていた。それに、吹き飛んだ先には本人が事前に置いた大きなボストンバッグ。
「…わざと、冬馬かずささんを怒らせて…手を出させた?」
「ご名答」
「…なんで?」
「『恋敵に対してするように手を出して下さい』ってお願いしたらちゃんとやってくれた?」
「?? …なんで冬馬さんに…っ!? まさか…」
 板倉は勘付いた。かずさも気づいた。
「そう、演技指導は本人にお願いするのが一番だしね」
 この女、和泉千晶は自分の脚本のために、演技のために、実在の人物を糧とする怪物であることに。

「そうか…そうやって春希たちにも近づいたんだな…なぜだよ…」
 砂でも飲み込んだかのようなかすれた声でかずさは聞いた。
「だって、あたしファンだも〜ん。あなたたちの…そう、付属時代のステージから」
「…っ!」
「あんたたちの三角関係、歌からダダ漏れだったもん。もうはまっちゃってさぁ。
 絶対これは脚本にしてやろうって。で、大学の三年間、二人を調べさせていただきました〜」
 それから千晶は、かずさたちが聞きに入ったのを見計らい、ぺらぺらと何の罪悪感もなく、どうやって3人の関係を調べ上げたか喋り出した。

162 名無しさんだよもん 2013/03/11(月) 22:28:36.05 ID:TEnqWxrg0
 全て話し終えた後で、千晶はそれまでのうすら笑いではなく、にこやかな微笑みを浮かべて言った。
「まぁ、でも、ケリついたみたいだね。あんたたちの関係」
「!? っ! 何を!?」
「アンサンブル増刊号、付属CD『White Album』ボーナストラック」
「!?」
「3人の和解の産物。あなたから声掛けないとあり得ないよね。あんな曲売られるの」
「………」
「春希とおめでとう、とだけ言わせてもらうわ。これだけは心から言える。」
「何…を…?」
 
「わたしが2年前最後に2人に合った時も雪菜ちゃんとの仲冷えてたしさ。特級スーパーかずさとして凱旋してきたあなたなら春希くんも鎧袖一触一発撃沈〜。そりゃあ雪菜ちゃんも笑ってあんたに譲るしかないさ」
「………違うんだ…」
 かずさは弱々しい声で訂正しようとするが、千晶は聞こえないふりをして続ける。かずさの口調を真似て。
「トドメに『過去の事は忘れたさ。3人であの日に戻ってみるか。さぁ、わたしのピアノについて…』」
「違うんだってば!」
 いつの間にかかずさの目から滂沱と涙があふれている。千晶は驚きの表情を見せて聞き返した。
「え? 何が?」

「………」
「まさか?」

163 名無しさんだよもん 2013/03/11(月) 22:34:04.62 ID:TEnqWxrg0
 かずさは訥訥と語り始めた。
「もう、春希は…」
 ストラスブールでの再会。日本での公演を決めたわけ。日本での再会。イラついて板倉にあたり、春希に助けを求める羽目になったこと。
 母親の悪だくみ、いや、計らいで春希の隣室で過ごした日々。
 しかし…
 コンサートの時に来なかった春希とズタボロの演奏。
 旧冬馬宅まで逃げた自分を追ってきた春希。自分を支えようとする春希。
 だが…

「わたしは………春希を信じることができなかった………自分の親も………」
 そして、知るべきでなかった真実を知ってしまう。母と春希が隠していた、母を蝕んでいた病魔…
 世界を失い、部屋に籠る自分を助けに来たのは…
 
「雪菜…だったんだ…」
 雪菜を拒絶した。
 しかし、かずさを恐れず、春希を失うことも恐れず、自分の持てる力の限りの世界を巻き込んで、ただ自分を救おうとしてくれた雪菜に…
「完敗…だった」
 元より周回遅れだった自分は身を退くしかなかったのだと。
 言い終わったかずさの手足から力が抜け、かずさはその場に崩れ落ちた。

164 名無しさんだよもん 2013/03/11(月) 23:39:01.89 ID:TEnqWxrg0
今日はここまでです。
感想お待ちしてます。

165 名無しさんだよもん 2013/03/12(火) 03:22:37.24 ID:Mnnoylp20
>>159
ちょっw
千晶が賭けをするとはw失敗したら千晶的に劇の面白さが(リスク高すぎ)
冷静に自己分析するかずさ・・・ありえねぇw

>>160-163
閉幕後にしてはちょっと元気すぎって感じがしなくもないけど
かずさに頬を張られて役者本能に目覚める千晶はナイス展開ですな
かずさが手を庇わないのもストラスブールのストキング事件で証明済みだし説得力感じる
で・・・・・・・・次は、まさかの百合展開とか
春希がいないなら、自暴自棄半分でかずさ意外と目覚めてしまったりしてw
千晶も引き出し広げるためにあえて果敢に挑戦

・・・やばい、わりと真面目に可能性あるような気がしてきた;;

166 名無しさんだよもん 2013/03/12(火) 13:00:10.82 ID:d/YG8bzJ0
 「**の表情を見せて」
 「不安げな表情をつくり」
 「涙を流して見せた」

 だまされるな〜かずさ〜

167 名無しさんだよもん 2013/03/12(火) 20:00:47.14 ID:yV+1y9e90

168 名無しさんだよもん 2013/03/12(火) 21:17:25.63 ID:lZyFzptn0
整理してたらWA2のピロートークCDが出てきた
久しぶりに心温まる猥談を聞いたらまた千晶熱がぶり返してきたぜ
FD欲しいな…後日談欲しいな…勿論18禁要素アリで

169 名無しさんだよもん 2013/03/13(水) 01:45:49.75 ID:wZ4tktXS0
今日は日付変わるまで仕事して、明日は6時出;;

ともあれ、今日はかずさvs千晶の

170 名無しさんだよもん 2013/03/13(水) 01:46:37.77 ID:wZ4tktXS0
 その鼓動のリズムはゆっくりと、規則的だった。あの時の、春希と同じ…
「………っ!」
 だからこそかずさは気づいてしまう。感情を押し殺し、何かを隠そうとしている鼓動だと

 どんっ!
「きゃっ!?」

 かずさから両手で突き放され、慌てて声をあげ、距離をとる千晶。
「だからぁ………悪かったって……」

 だが、かずさは暗く震えた口調で千晶を問い詰める。
「『知らなかったから』悪かった…って、本当に思っているというのか?」
「え?」
「本当に『知らなかった』『想像もつかなかった』と言うのか?」
「何を?」
 千晶はあくまでシラを切ろうとした。

 しかし、かずさは追及の刃を振り上げる。
「嘘を吐けっ! お前のシナリオでは雪音が勝っているだろう!
 雪音はっ、自分を省みず榛名を助けに来たじゃないか!

171 名無しさんだよもん 2013/03/13(水) 01:48:39.83 ID:wZ4tktXS0
 千晶は思った。
 慰めさせてももらえないか。
 じゃあ、あんたに本当に必要なモノをくれてやるよ。
 春希も、あんたの母親もしてくれないことをね。あんたのファンだからね。
 ここまでする義理なんてないけど。蛇足だけど。
 副作用の強い『劇』薬だけど。くらいやがれ。
 そして、一週間で立ち直れよ。

「ああ、そうだよ。振られたのはあんたの方だって、ハナから気づいてたよ。あんたに勝ち目はないって」
「…っ!」
「あんたの話を引き出して、自分の脚本の『答え合わせ』したかっただけだよ。ペラペラしゃべってくれてありがとさん」
「………なんで、わたしが…ふられたと…」
「だってそうじゃん。自分から和解を申し出られるくらいなら、3年間2人に音沙汰なしなんてはずがない。
 雪菜の方だろ。あんたに足蹴にされても和解を求めたの」
 容赦ない言葉の刃がかずさを血まみれにする。
「逃げてたんだろ? 春希の想いから! 空港であんたを抱きしめてくれたやつから! 恋人の前にもかかわらず!」
「…馬鹿やろう…あたしが…どれ…だけ…」
 消え入りそうなかずさの声に、千晶は容赦ない凍てつかんばかりの冷水を浴びせる。
「ああ、全く想定内の負け犬の遠吠えならぬ遠ピアノだね。全部ピアノにぶつけてやんの。
 帰ってきても中身は高校生のガキのまんま。ぶっぶー」

172 名無しさんだよもん 2013/03/13(水) 01:50:20.11 ID:wZ4tktXS0
「ひどい…ひどいです。瀬ノ内さん。人を何だと思っているんですか!」
 板倉が動かないかずさを抱きしめつつ、泣きそうな声で千晶を責めるが、千晶は口調を変えずに答えた。
「そだね〜。『これも役作りのため。わたしにとっては芸がすべて』かな。
 あんたが聞きたがっていた『瀬ノ内晶さんの役作りの秘訣は何ですか?』の答えがこれ。記事にしていいよ」
「…っ!」
 板倉はくちびるを噛んだ。記事にしてこの怪物を懲らしてやりたいのはやまやま。
 しかし、それが冬馬かずさを再び傷つけるのは明白。記事にできようはずがない。千晶もそれがわかって言っている。

 魂まで打ち砕かれたかのようなかずさが、床に手をついたままで口を開く。
「…最後の…質問だ…」
 千晶は人を喰った態度を続ける。
「〜ん〜。最後だなんて名残惜しいねぇ。でも、まぁ、何でも聞いてちょ」
 かずさが絞り出すような声で質問を紡ぐ。
 「話にならないわたしは…ともかく…なぜ…榛名は和希と…話の中で結ばれない…」
「へ?」
 亡骸のような様子だったかずさの首が持ち上がり、死霊のような呪いの声を上げる。
「なぜ榛名は和希と結ばれなかったのかと聞いているんだっ! 結ばれる結末はなかったかと聞いているんだっ!」
 完全に予想外の質問だった。千晶は平静を装うことすらできず、今日初めてかずさの前でうろたえる姿を見せる。

「答えろっ!」

173 名無しさんだよもん 2013/03/13(水) 01:51:56.70 ID:wZ4tktXS0
こよいはここまでにしとうごじゃります。

…かずさいじめすぎて胃が痛い

174 名無しさんだよもん 2013/03/13(水) 03:17:55.81 ID:z4DzDWzn0
>>170-172
うーん、かずさって取られたってワンワン泣きじゃくるタイプではあると思うけど
ここまで恋愛の勝ち負けにこだわるタイプでもなさそうな気が
というか、ここまでかずさが初対面の相手にペラペラ本音打ち明けるようにも思えないw
ちょっと強引すぎな展開の感じもするかもw

175 名無しさんだよもん 2013/03/13(水) 21:49:16.13 ID:iCemE9/g0
>>174
感想まじありがてぇ

>>かずさ恋の勝ち負けこだわりすぎでは?
 「雪菜trueでかずさ潔く身を引きすぎ」って感じたのが、このSS書き始めた動機の一つなもので(^。^;)ゞ 
 反動で導入から黒い感情くすぶったかずさになってます。

>>かずさペラペラしゃべり過ぎ
 千晶マジックということで(^-^;)

今日は日付変わる前に投稿できそう

176 名無しさんだよもん 2013/03/13(水) 23:44:08.01 ID:wZ4tktXS0
ういっす。本日分投下開始。

177 名無しさんだよもん 2013/03/13(水) 23:45:30.92 ID:wZ4tktXS0
**********5/16(日)冬馬宅にて

「かずささん! 開けてください! …せめて何か食べてください…」
 これで丸3日、自室に籠もりきりのかずさの身を心配して美代子が扉を叩く。
 最早かずさが冬馬曜子オフィスの唯一の稼ぎ手なわけだが、来週末に公演を控えた彼女がこの状態。美代子の心中穏やかならざることいかばかりか、である。
 そこへ曜子が帰宅してきた。
「ふう…毎度の事ながらわが娘にも困ったものね…でも、今日は助っ人を連れてきたわよ…」

「こ、こんばんは…ははは…」
「…お邪魔します…」
「ばんわ〜っ」
「失礼します。お邪魔させていただきます」
 かずさの友人の武也、依緒、そして、彼らに首根っこを摘ままれるようにして現れたのは千晶。最後は板倉記者であった。

 あの劇の日の翌朝、レッスンに行こうとしないかずさに当惑する冬馬曜子オフィスに板倉記者から電話があった。
「お電話失礼します。東邦出版の板倉です。…ええ、その節はどうも
 …いえいえ…いえ、今回は取材ではなくて
 …はい、実は昨晩、かずささんと元御学友の方との間でトラブルがありまして
 …はい、私もその場にいたのですが、その後もかずささんのご様子が尋常ではなかったので、ご自宅まで送らせていただいたのですが
 …はい、その後問題ございませんでしたかと老婆心ながら

178 名無しさんだよもん 2013/03/13(水) 23:47:27.05 ID:wZ4tktXS0
 今回の説得の口火を切ったのは依緒であった。
「冬馬さん…食事くらい食べたら?」
「…いい。…食欲ない…」
 その後もかずさの身体を気遣う依緒だが、かずさには聞き入れられなかった。

 続いて武也が話しかける。
「…冬馬…春希が聞いたら心配するぞ…」
「っ!…おねがいだよぉ…やめてくれよぉ…こんな…こんな情けないわたしを春希に見せないでくれよぉ…」
 かずさの声が泣きそうなほど弱るのを聞き、これは逆効果と悟る武也。

 曜子は次の説得相手を見繕ったが…美代子も板倉記者も効果は望めない…
…と、なればこの千晶という、今回の件の主犯格と言える怪しい新人女優しかいない。
「…あなたが説得できなかったら、コンサート中止の賠償金を払って貰おうかな?」
 軽く脅しを入れる曜子に、千晶が口を開く。
「え〜。お言葉ですがお母さん」
「はい? 何よ?」
「今年頭の来日時に〜、春希を指名してかずさの密着取材仕向けた上に〜、
 春希の隣の部屋を押さえてかずささんに半同棲生活強要なんて、
 『それなんてコロンビーナ文庫?』なマネしちゃったお母さんにも、
 かずささんが失恋の傷こじらせた原因あるんじゃないかなと」

179 名無しさんだよもん 2013/03/13(水) 23:50:19.35 ID:wZ4tktXS0
「…ん」
 促されてドアの前に立つ千晶。しばし考え込むも、やがて何か諦めたように首を振り、たどだしく口を開いた。
「…あのさ、冬馬さん。あれからずっと考えてはみたんだけど…」
 ドアの向こうからは返事はない。しかし、千晶は構わず続ける。まるで自分自身にきかせるように。
「…結局、榛名が和希と結ばれて幸せになるエンディングは思い浮かばなかった…」

 『結ばれるエンディングも構想していたが、ボツしただけ』という嘘が至極簡単なのは百も承知であったが、千晶の脚本書きとしてのプライドがそれを許さなかった。
 ドアの向こうから僅かにため息が漏れたのが感じられた。
「榛名は…自分が傷つくことにも他人を傷つけることにも、ピアノを捨てることにも、
 三人の中で一番臆病で一番不器用で…人と交わることも一番苦手なキャラだから…わたしがそういうキャラに作ったから…
 …和希と幸せに結ばれるように動いてくれないんだ」

 ドアの向こうから何も返らないが、千晶は滔々と語り続ける。
「…でもさ、榛名はエンディングがどうとか、そんなこと考えて生きちゃいないんだよ」
 もう、千晶はドアの向こうの反応を伺うのをやめていた。
「誰だってそうだろ? 和希だって雪音だってそうだ。いや、例え意地悪な神が後味最悪のエンディングをちらつかせても、やつらは恋も友情も音楽も、そうして支え傷つき傷つけあうことをやめない。
 幕が下りるまで、舞台の上で演じ続けるんだ」

 千晶の独白が続くが、曜子たちもそれを見守っている。
「エンディングが予想できる? だから脚本がつまらない、観たくないなんて言う観客は馬鹿だ。演じたくないなんていう役者がいたら大馬鹿だ。

180 名無しさんだよもん 2013/03/13(水) 23:53:02.02 ID:wZ4tktXS0
 もはや、説得しているんだか自分がいじけているんだか千晶本人も解っていない。
「お前の来週のコンサートなんてなぁ、お前ひとりにS席5500円だぞ?
 わたしはビンボーだからC席2500円しか買えなかったんだぞ!
 ウチの劇団のチケットなんて、役者から裏方さんまで束になってかかってやっと一枚5000円なんだぞ!
 しかも、チケットタダであげたのに来てくれない奴もいるんだぞ!」
 もはや、ただの駄々っ子だ。

 ここまでで、ようやく千晶の愚痴が終わった。当然ながらというか、ドアは開かない。少し息を荒くしつつ、千晶は考えた。
『やっぱりこの手しかないか…』
 千晶は落ち着いて、心を研ぎ澄ました。
 イメージするのは春希。説得の成功率が一番高そうな人物だ。もちろん、リスクもある。
 第一、自分が演じているのはバレバレなのだから、すぐ反感を買うだろう。
 しかし、自分の才能にかけて失敗したくはない。
 自分の演技力を駆使して、一瞬だけでもかずさの心に春希を映してみせる。千晶はそう決意した。

 すうっ

 呼吸一つであたりの空気が舞台の上のそれとなり、緊張感が走る。
 曜子たちはただならぬ気配を感じつつも、気圧されて立ち尽くす。
『チャンスは一瞬。ひとセリフで決めてやる…』

181 名無しさんだよもん 2013/03/13(水) 23:55:13.41 ID:wZ4tktXS0
<Ding Dong>

 本日の投下は終了しました。
 明日は…たぶん投下できますが、今週末は投下できそうにないです。

182 名無しさんだよもん 2013/03/14(木) 05:35:52.40 ID:PeoQQe970
>>177-180
かずさ、引き篭もったかw
って友人連れてきたってイオタケに千晶って敵ばっかじゃねーか!
天の岩戸の前での曜子さん、お茶目(脳内再生余裕だ)
千晶には曜子ママに「いま公演中で忙しいんですけど〜」くらいの嫌味言って欲しかった
うーんピシャリと言い放つ千晶は格好いいな千晶らしいというか(イオタケの前で爆弾投下はどうかと思うがw)

千晶は、どうなんだろう心理描写とかはあんまりない方がいいように思うウんだけど
一見能天気そうに前触れなくいきなり爆弾投下みたいな方がインパクト出るんじゃないかな

で、まずいぞ春希、いや春希な千晶・・・かずさの忠犬にならないよう気をつけろーwww

183 名無しさんだよもん 2013/03/14(木) 06:06:03.15 ID:+URXnuu90
>>182
劇の最終日が終わるや否や連行してきた、とあるから、その愚痴はない。

ただし、かずさが観劇した翌日の話となってて、
しかも「訴訟をちらつかせた」とあるから、大分破綻気味な状況なのは確かw
その辺は惜しいなぁと思いつつも、毎日楽しみにしてます>作者様

184 名無しさんだよもん 2013/03/14(木) 06:34:25.68 ID:+URXnuu90
あ、いや籠城して3日と書いてあったわ。すまん

185 名無しさんだよもん 2013/03/14(木) 12:29:22.60 ID:G1woNciI0
>>184
いや、ども。

こちらも思いついた順に書いていたんで、
読み返して見たら確かに解りにくいわ。

説得開始前の千晶の楽屋エピソードあるんで、
wikiとかに投稿し直す際は修正&千晶エピソード
先にはさみます。

186 名無しさんだよもん 2013/03/14(木) 16:05:44.57 ID:GUtU3cvS0
>>182
イオタケ敵じゃないッスよ。 
春希に変な気起こさなければ今のところはw

千晶の心理描写なんだけど、省くと書いているほうも訳わからなくなっちゃうので書いてますw

謎の多い千晶のサプライズアタックも魅力的なんですが(あぁ、蘇る本編プレイ時の衝撃)
私には真似できないなあ(^-^;)

187 名無しさんだよもん 2013/03/14(木) 23:46:04.99 ID:rrCLtPMC0
では本日分投下

188 名無しさんだよもん 2013/03/14(木) 23:47:45.87 ID:rrCLtPMC0
 春希を象られた口が言葉を発するために開かれる。その刹那だった。

 バタンっ、ごんっ!
「かづっ#@&!※@#!」
 勢い良く開けられたらドアに、千晶はしたたかに顔を打ち、言葉にならぬ悲鳴とともに尻餅をついた。

「…母さん、美代子さん、ごめんなさいっ!」
 籠城戦の集結を告げる謝罪の声の大きさに安堵の表情になる曜子や武也たち。
「…部長も依緒もありがとう。迷惑、かけたな…。この埋め合わせはきっとさせてもらうよ…」
「いやいや。いいって、いいって。いいってことよ〜へへへ」
「よかった、冬馬ぁ…」
「板倉さんもいろいろありがとうございます」
「い〜え〜。どう致しまして」
 と、ひととおり礼を言ってまわるかずさを、千晶は尻をついたまま鼻を押さえて涙目で恨みがましく睨みつける。
 そんな千晶にやっと気づいたように、かずさが声をかける。
「瀬能さん許してちょんまげ」
「…※@#※&!」
 痛みでまだ声が出ない千晶は、声にならない怒声と共に中指を立てた。

 かずさは礼を言い終わると、

189 名無しさんだよもん 2013/03/14(木) 23:48:22.86 ID:rrCLtPMC0
「…ほんと、我が娘は…」
 残された曜子が詫びともつかない呟きをもらす。武也も、呆れ顔で言う。
「完全復活…ですね」

 板倉と依緒も、かずさの回復を喜びつつ、何か釈然としない表情であった。
「あれは…瀬之内さんの説得が効を奏したのでしょうか?」
「…なんで? どこが?」

 翌日、レッスンに来たかずさのピアノを聞いた彼女の師、ヴァレンガリア・溝口は呆れたようにこう語った。
 なんで、レッスン休んでおいて完璧に仕上がってるの、と。

190 名無しさんだよもん 2013/03/15(金) 00:07:56.95 ID:XFjGodJh0
**********5/16(日)少し時間を巻き戻り、『シアターモーラス』控え室、『届かない恋』公演最終日カーテンコール後

 鏡の前でメイクを落としている先輩女優を前に、千晶はどう声をかけたものかと思案していた。
 女優、似鳥まふゆ。劇団「コーネックス二百三十度」所属の看板女優にして、日本屈指の若手演技派舞台女優である。
 舞台の下では『そこそこの美人』程度の印象しか与えない彼女だが、一度舞台に上がると圧倒的な存在感で観客の心を鷲掴みにする。
 演技力も演技の幅も千晶を凌いでおり、また、豊富な声量とそれを最大限活用した高い歌唱力を誇っている。
 それでいて博識で鋭い洞察力、理解力を有しており、旺盛なバイタリティで脚本を貪欲に吸収する。
 千晶の脚本『届かない恋』についても鋭い質問を重ね、あっという間に『初芝雪音』役を自分のものにしてみせた。
 千晶が彼女に勝てる点は一点、脚本家としての能力のみであり、つまりは役者として何一つ勝てる点はなかった。
 千晶がこの劇団に入団したのも彼女がいるからである、と言って過言でない。
 彼女は千晶にとって尊敬する目標であり、越えるべき壁であった。

 後ろでもじもじしている後輩に声をかけたのは似鳥の方からだった。
「脚本の直し、良かったわよ。平手打ち対決のシーンも金曜日からぐっと良くなってた」
「は、はい!」
 先輩から誉められて千晶は顔を明るくする。

 彼女の言う「脚本の直し」とは、今公演『届かない恋』最終日間際にラストシーンに入れた修正である。
 大きな修正ではないが、重大な修正だった。
 ラストシーン、幕が閉じる直前に機上の榛名の慟哭の声を入れる、それだけだった。

191 名無しさんだよもん 2013/03/15(金) 00:21:05.24 ID:XFjGodJh0
 千晶はほっと息をついた。
 自分のような新人の脚本が公演されるに至ったのは、実力というより「劇団に試されている」面が大きい。
 特にこの先輩の評価は怖かった。
 二人一役でやっていた大学時代の脚本を磨きなおしてはみたものの…
 …直接モデルに会っていない「冬木榛名」の人物描写はまだ改善の余地があるものだった。
 
 そんな折に目の前にひょっこり現れてしまったかずさも不運だったのだろうが…
 千晶が強引にかずさを『観察』しにかかったのはそういうわけでもあった。

「でも、最初から思いつかないあたり、あんたやっぱり『まだ』ね」
「…*※#!」
 自身のプライベートな極秘事項を言い当てられ、慌て驚く千晶。
「カラダ捧げたオトコから簡単に身を引けるなら苦労しないってこと。あんたも早く経験しときなさい」
「あはは…」
 先輩の生々しい指導に苦笑する千晶だった。言われて思い浮かべてしまうのは特定の男性。
 千晶は慌ててそのイメージを振り払って、本来伝えるべき話に戻ろうとする。
「…あの、先輩、実は今日の打ち上げちょっと…怖いヒトに呼ばれちゃって…」
「原因は冬馬かずさ?」
「!」
 またもや言い当てられ、驚く千晶に似鳥は言う。

192 名無しさんだよもん 2013/03/15(金) 00:26:54.98 ID:XFjGodJh0
 2年前の春希や雪菜の時のように十分に作戦を練ることなく、強引にかずさをひっかきまわしたツケは最終日の後に回ってきた。
 あの日以来―今日で3日目になる―かずさは部屋に籠って食事もとっていないらしい。
 そして、かずさを心配する周りの人間―母親である曜子や友人たち―により、千晶はひっ立てられる羽目になってしまったのだ。

「まあ、脚本の直しに貢献してくれたからいいか…って言えるのは、劇団に迷惑かけないようにしてからね」
「は、はい。そういうわけで今日は失礼します…新人の分際ですいません…」
「ちゃんとみんなもフォローするから、心配しなくても良いわよ」
「あ、ありがとうございます!」

 千晶は思った。
 本当にこの人はいい人だ。役者としても、先輩としても尊敬できる…ある一点を除いて
「ま、そういうわけだから、来週末はわたしに付き合いなさい。TRPGのコンベンション」
「…え…また…ですか」
「今度はクトゥルフ神話RPGオンリーイベント。どっかのラノベで扱われて以来、変なファンが増えているから、ちゃんと本気のクトゥルフ神話を教えてあげないとね〜」
「あの、来週末はちょっち用事が…」
「あら、じゃあ土日どちらかでいいわよ」
「…」
 両方潰させる気だったのか、この先輩は。
「はやく千晶ちゃんにもルール覚えてもらってゲームマスターとかキーパーとかしてもらいたいのよ。千晶ちゃんの作るシナリオ楽しみ〜」
「あはは…じゃあ日曜に…失礼します」
 TRPG―テーブルトークRPGという、審判役一人と複数のプレイヤーが架空の人物になりきり、アドリブ会話とサイコロで進行するRPGゲーム―に無理やり人を誘うのが、女優、似鳥まふゆの悪癖であった。

193 名無しさんだよもん 2013/03/15(金) 00:30:21.83 ID:XFjGodJh0
<ぽーん>

本日の投下終了。

週末は仕事で投稿できませんが、
週明けにはかずさの逆襲の話とかずさの籠城時のシーン(ドアの中のシーン)が入ります。

194 名無しさんだよもん 2013/03/15(金) 03:39:29.04 ID:C4rPIv7/0
>>188-192
・ひととおり礼を言ってまわるかずさ
・「瀬能さん許してちょんまげ」
・先輩から誉められて千晶は顔を明るくする。

・・・か、かずさじゃねぇ (( ;゚Д゚)))ガクブル
・・・ち、千晶じゃねぇ (( ;゚Д゚)))ガクブル

まさにこれぞ、もっと恐ろしいものの片鱗をみたぜ!(AA略

195 名無しさんだよもん 2013/03/15(金) 13:23:31.92 ID:iCsVoJYo0
>>194

>>謝罪かずさ
美代子への土下座もありましたし、ひととおりくらいはやるかなと

>>ちょんまげ
雪菜に日本に残るコト伝える際の話ふりや、夢想でのルーベンス談からするに、たまにケレンミある皮肉、意趣返しするコかなと
いや「ちょんまげ」の言い返しはキャラずれた苦笑ものと自分でも認識してますが(^。^;)「千晶をからかい返すかずさ」は入れたかったので

>>誉められ喜ぶ千晶
付属演劇部長、ウァトス姫の横暴ぶりから、逆に優れた役者には追従するかなと

雪音役取られ+完璧に演じられ&榛名役酷評され焦る千晶の話を先に入れた方が良かったかなぁ

あと、もう一人ナンバー2先輩構想してますが、横暴な先輩にして「あの男の相手をしろ」と付属演劇部時代のブーメランやるか、は需要あれば

196 名無しさんだよもん 2013/03/17(日) 21:04:11.22 ID:OE8gDgfq0
予定早めてスマホから投下
改行乱れ勘弁

197 名無しさんだよもん 2013/03/17(日) 21:05:52.63 ID:OE8gDgfq0
**********5/22(土)フィリア音楽ホールにほど近いフレンチレストランにて

 千晶が復活した冬馬かずさのコンサートに来てみれば、チケットを購入したC席にはかずさのマネージャーの工藤美代子が待ち受けていた。
 そして、S席に案内された。おかげで1ランク上の音楽鑑賞ができた。
 さらに、『コンサート後に会食があるのでかずさの友人のあなたも来てほしい』と言われた。

「こないだの件か…S席に案内して聴かせてくれた上に、わざわざ食事に呼ぶのは和解の呼びかけかな? 向こうも訴訟ちらつかせたりしてたし」
 と、その時千晶は思っていた。

 会食の席もメンバーもだいたい千晶の予想どおりだった。
 自分がなぜかかずさの隣り。
 板倉や依緒、美代子が周りを囲んでいたが、一人だけ予想外の人物が曜子の隣りにいた。

198 名無しさんだよもん 2013/03/17(日) 21:07:00.52 ID:OE8gDgfq0
 毛利祐子…今の座長の奥さんだ。劇団の営業主任でもある。
 無名の時代から座長を支えてきたヒトだが、嫉妬深く、すぐ座長の浮気を疑うらしい。
 入団する新人女優をチェックするのもその一環だとまことしやかに噂されている。

 どうやら、曜子と祐子は旧知の間柄だったらしい。
 食事は「かずさのコンサート成功を祝して」ということで始められたが、ほどなく祐子と曜子の昔話に花が咲きだした。いや、火花がちりだした。
 表面上はにこやかであるが、座長、毛利久志の話になるや、言葉の節々に棘が飛び出し始めたのだ。
「しっかし、あの久志くんのほうからあなたにプロポーズしてきたなんて、今だに信じられないわねぇ」
「ええ、どこぞの性悪女が引っ掻き回してくれやがらなったら、もっと平和だったでしょうねぇ」
「まぁ、賞味期限切れまで平穏無事、なんてことなくて良かったわぁ。ところで、10年目にもつれこんだ結婚生活はまだ楽しい?」
「もちろん。和えて不満を言うとすれば、あなたが永遠にウィーンで頑張ってくれていたらもっと楽しかったのにねぇ」

 …あまり関わりたくない会話だ。
と、他の誰もが思った。

 しかし、不幸にも千晶に次の会話のバトンが渡された。

199 名無しさんだよもん 2013/03/17(日) 21:08:20.21 ID:OE8gDgfq0
「瀬之内ちゃん。曜子となんかトラブったんだって?」
「はい、ちょっと…冬馬かずささんと」
「本当に?」
「? はい」
「…う〜ん。本当か…」
 何を疑っているのか、という疑問は曜子が明らかにした。
「だからそう言っているじゃない。久志クンと会ったのは、あくまでかずさと瀬之内ちゃんの件だってば。ここにいるみんな証人よ」
「娘の件をダシにしてまた久志にコナかけに来た、という可能性も残っているけどね」
 …四十路めぐってるのにどれだけ信用ないんだ、曜子さんは。
 察するに、曜子が劇団を訪れたのを聞いて座長、つまり夫の浮気を疑った、ということらしい。
 つまり、千晶、板倉、依緒は「曜子が劇団を訪れた訳」にウソがないことを示す証人というわけだ。
 しょーもな…まぁ、変な態度を取って座長の奥さんに睨まれてとばっちりを喰らわないようにしよう、と千晶はそう思っていた。

200 名無しさんだよもん 2013/03/17(日) 21:09:54.81 ID:OE8gDgfq0
「で、かずさちゃんはウチの劇団員とどんなトラブルがあったの?」
「あ…それは…ちょっと話す前に『千晶』に確認することが」
「…っ!?」
「ねぇ、千晶…」
 千晶は戦慄した。かずさに『千晶』と名前で呼ばれたのは初めてだ。なれなれしさよりもっと危険なものを感じる。
 彼女の勘が非常ベルをけたたましく鳴らし始めた。

「千晶…あんたさ…」

201 名無しさんだよもん 2013/03/17(日) 21:10:41.34 ID:OE8gDgfq0
**********先週の真相、5/16(日)籠城中のかずさの部屋

 かずさは深く、暗い海の底にいた。
 明るい場所で現実を見たくなかったから。
 電気を消して、厚い遮光カーテンを閉じれば何も見えない世界ができた。
 胸の中の苦しみだけは消えないが、その世界の居心地は良かった。
 あの女、瀬能千晶はもちろん、雪菜も春希も、そして、一番嫌いな自分すらいなかった。
 こうしてピアノを弾かずにいると、自分自身すら見ずに済んだ。

 3日間そうしていると、友人達が来た。
 拒絶する気力もなく、ふらふらと漂うようにドアの前まで足を進める。

 依緒は自分の身体を心配してくれた。
 3日前に飴玉を一袋噛み砕いた後は水しか飲んでいない。
 しかし、足は少々ふらつくが、食欲もない。 元気になりたくないとすら思った。
 まだ…ベッドからドアの前まで来る力はあるよ…だから、そっとしておいてよ…

 部長は春希が心配すると言った。
 あぁ、わたしは今ヒドい化け物になっているに違いない。なにせ、ずっと暗い所で何もしていないのだ。
 見られたくなかった。弱った…

202 名無しさんだよもん 2013/03/17(日) 21:16:11.68 ID:pfhIqNtu0
「今年頭の来日時に〜、春希を指名してかずさの密着取材仕向けた上に〜、#※@※&*」
 この声は…あの女だ…何しに来たのだろう。

 不思議と嫌悪感は感じなかった。ドアの中で化け物になっている自分の方がずっと嫌いだったから。

 その女がドアの前でしゃべり始めた。
「『…あのさ、冬馬さん。あれからずっと考えてはみたんだけど…』」

 はて、何を聞いたっけ…?

「『…結局、榛名が和希と結ばれて幸せになるエンディングは思い浮かばなかった…』」

 ああ…そうだ、榛名だけでも幸せにできなかったのか聞いたっけ
 そうか、やっぱりだめなのか

 「『榛名は…自分が傷つくことにも…$#$%&…』」
 ドアの外では千晶が何か喋っているが、かずさの耳には全く入っていない。

 自分がいなくても、どこかで自分に似たピアニストが幸せになってくれればと思った。
 …バカな話だ…諦めよう…

203 名無しさんだよもん 2013/03/17(日) 21:17:39.75 ID:pfhIqNtu0
 外ではまだ千晶がしゃべっている。
「『…例え意地悪な神が※#@&…』」

 ああ、なんか言ってる。こいつの芝居なんて見に行くんじゃなかった。
 たしか、春希や雪菜も来なかったんだっけ。
 …へぼ芝居だからだよ…

 …そういえば、わたしのコンサートにも、春希や雪菜まだ来たことないなぁ…まぁ、しょうがないか…

 あ、思い出した。そういえばこの女、コンサートにも来ていたな…しかも全部…たしか、終始きょろきょろと…誰か探していたみたいで、目障りだった。

 …誰を探していたんだ?
 …もしかして、春希たちが来ていないかと…

「『…しかも、チケットタダであげたのに来てくれない奴もいるんだぞ!』」

 …今のは…間違いなく春希たちのことだな。

 そういえば、私にくれたチケットは2枚…わたしが春希や雪菜を連れてくるのを期待した?

204 名無しさんだよもん 2013/03/17(日) 21:19:12.64 ID:pfhIqNtu0
 …まさか、春希だけ呼んで欲しかったとか…

 …そう考えると、いろいろ辻褄が合ってきたように感じる…この女は実は春希のことが好きなんじゃないか?

 そう気づいた瞬間、不思議な感覚が足元を包んだ。
 さっきまで暗い海の底で一人溺れていたような気分であった。そうしたらどこからか、ぴちゃぴちゃ水をかく音が聞こえた。
 こんな胸の中が苦しい世界でも一人じゃない。そう気づいた。

 そのとたん、いままで自分が嵌まっていたのが、深い海でなく、足がつくほど浅い水たまりだったことがわかった。

 …もう出よう…
 かずさはドアノブに手を掛けた。

 …自分のわがままでまたみんなに迷惑かけてたな。
 よし、謝ろう。ちゃんと。
 かずさは勢い良くドアを開けた。

205 名無しさんだよもん 2013/03/17(日) 21:20:44.74 ID:pfhIqNtu0
**********再び、5/22(土)レストラン 千晶とかずさ

「千晶…あんたさ…春希の事好きだったんだね」
「んなっ!? #$&%$”!」
 千晶の口から言葉にならない吃驚の声が飛びだした。

「そりゃあ千晶もわたしを臆病者呼ばわりして怒るね。私だけが失恋したみたいにあんたの前で喚いてみせてさ。
 あの時はそれに気付かなかったんだ。手を出して悪かった」

「いや、それ、ちょっとちょっと! ちがうちがう!
 個々の事実が合ってるだけで、脈絡も動機も時系列も全部めちゃくちゃじゃん!!」
 あわてて訂正を入れようとする千晶だが、突っ込みどころが多すぎて何から正していいやらわからない。

 それを聞いて曜子が笑いをこらえながら言う。
「あらあら、春希ちゃんのこと好きだったのは否定しないんだ?」

 ………しまった…一番最初に否定すべきはそこだった…何てこと…

 痛恨の極み…不意を突かれた感情に顔が赤らむのを抑えきれない…何たる不覚…

206 名無しさんだよもん 2013/03/17(日) 21:22:43.66 ID:pfhIqNtu0
 うなだれる千晶を、曜子は娘の意趣返しとばかり容赦なくたたみかける。
「春希ちゃんすごくいい男だしねぇ…わたしも娘の敵討ちにアタックしちゃおうかな?」
「黙れ。この色情狂」かずさがツッコむ。
「でも、千晶ちゃん赤くなって初々しいわねぇ。どう? ゲストの祐子ちゃん」
「いやはや。今のかわいい反応が演技だったらもう降参。似鳥ちゃん、長谷川ちゃん抜いて劇団トップだわ」
「祐子ちゃんはこう言ってますがどうでしょう? 解説の依緒ちゃん」
「ん〜。お友達の前で好きな子言いあてられちゃった中学生か、お前はっ、って感じですね〜」
「社長! からかうのはやめてあげて下さい!」

 ………だめだ…なんだこの茶番
 しかし、「春希の事を言いあてられて思わず赤面してしまう」というミスはどうにも拭い去れない。
 なぜ、かずさはその事に気付いたのだろう?
「なぜ…わたしが春希の事が好きだったって…思うわけ?」

207 名無しさんだよもん 2013/03/17(日) 21:24:46.35 ID:kRT+sTk10
「うん…春希が自分の劇見に来てくれないとかぶつくさ言ってるとことか、私のコンサートでいつも観客席見回しているとことかかな」
 …それだけ? …
 …明らかに判断材料は足りていないのに
 …推論を勘だけで確証づけて正解に至ってしまうタイプ
 …あたしの一番…苦手なタイプだ

「と、いうわけで許してくれるかな? 千晶」
「………」

 千晶は思った。
 もはや失地は回復できそうにない以上、諦めて和解は成立させておこう。

「うん…わたしもヒドいこと言って悪かった」
「こちらも手をあげて悪かった」

 これで手打ちか、と、ひとまず胸をなで下ろす千晶に、依緒がとんでもないことを言った。
「…これで元どおり友達だね」

208 名無しさんだよもん 2013/03/17(日) 21:26:25.89 ID:YO0eOmDB0
<ぽーん>
ちょっと切れ目がわるいけど、残りはまた明日

209 名無しさんだよもん 2013/03/18(月) 12:42:06.54 ID:BQhLnUcV0
昼休みなので投下

210 名無しさんだよもん 2013/03/18(月) 12:43:15.12 ID:BQhLnUcV0
「…ちょっと待て誰が友達だ」
 すかさず問い返す千晶に依緒はわざとらしく問い返す。
「え? 違うの? 冬馬」
「ああ、わたしの落ち込んでいる時に自宅まで励ましに来てくれた。もう友達じゃないなんて言われてしまうと傷ついてしまうな」
「………」
「許してくれるよね?」

 なんてことだ…ここで「嫌」と言えるわけがない。言ったところで、「失恋が原因で喧嘩していた『友人』」の代わりに「失恋が原因で喧嘩中の『友人』」にされるだけだ。
 かずさたちを自分の関心の対象にして馴れ馴れしく近づいた報いがブーメランのように返ってきた。
 千晶はうなづくしかなかった。
 
「ああ。一人の男をめぐって争っていた2人が友情を取り戻すっていいコトだわ」
「あなたが言うと説得力無さすぎだわ。曜子」

 もう、何とでも言ってくれ…千晶が理解し、受け入れるしかなかったのは、自分がなぜか逆にかずさの趣味の悪い執着の対象になってしまい、容易に逃れられそうにないことだった。

「じゃあ、仲直りですね。約束通り写真、撮ってもいいですか?」
「もちろんだよ、板倉さん」
 板倉はカメラを千晶たちに向けた。映像素子には屈辱を堪える千晶の表情があった。
 依緒もスマホを取り出し、「仲直りの2人」を撮り始めた。

211 名無しさんだよもん 2013/03/18(月) 12:44:15.53 ID:BQhLnUcV0
「ホント。娘泣かせてきたからどんな悪たれかと思ったらこんなかわいい子だと思わなかったわ」
 かずさが機嫌良く微笑む母にあいづちを打つ。
「ああ。ふだんは人を喰った性格の役に入っているだけだったんだな。千晶は」
「…っ!」

 千晶の普段の感情コントロールは完璧に近いが、それは千晶が「怠惰で軽妙洒脱な和泉千晶」なり「芸のためなら人を人と思わない瀬之内晶」なりの役に入っていた場合に限る。
 その事にかずさは、明らかに判断材料は足りていないのに、推論を勘だけで…以下略。

 では、どうして千晶は「和泉千晶」「瀬之内晶」の演技に入れなかったか…
 …たまたま同席していた祐子を警戒し、「余計なコトを言うまい」とするあまり、舞台にしゃしゃり出たがる2人の「役」を引っ込ませていたからだ。
 そして、本人すら気づかない弱点を露呈させてしまっていたのだ。

 役を作るのに念を入れる分、役に入っていない「ただの千晶」状態ではアドリブが効かないのが千晶の泣きどころであった。

 千晶はそのかずさの言葉を聞いて、ようやく自分が「演技ができていない」ことに思い至った。
 それに気づいた千晶はすかさず自分の「役」を選びなおす。
 
 すうっ
 
 千晶が一呼吸すると千晶の『役者』の引き出しが開かれ、何百もの役の仮面が彼女の脳裏に陳列された。

212 名無しさんだよもん 2013/03/18(月) 12:45:30.23 ID:BQhLnUcV0
 しかし、その刹那のかずさの思いがけない行動が、千晶の選択を決定的に誤らせた。
 
「千晶かわいいよ千晶」
 なでなで

 『なっ!』
 子どものように頭をなでられて思わず千晶が選んでしまった仮面は、
 
「ふにゃぁ!? なにするにゃあ! ………あ…」

 子猫の仮面であった。

 誰も爆笑をこらえることはできなかった。
 曜子は「お腹痛い」と椅子から転げ落ちた。
 美代子は、なぜか顔を赤らめ「か…かわいい」とつぶやきつづけていた。
 祐子は真似して遊んだ。
 ひどいのは依緒で、実は動画撮影していたスマホからの映像を全員の携帯に転送した。
 それを着信音に設定したかずさもたいがいである。

「あたしが初めて自分から作った友達だしさ…、一生大事にするよ」

213 名無しさんだよもん 2013/03/18(月) 12:53:36.91 ID:SmEKOXP90
<ぽーん>
ひとまず、かずさと千晶の出会い編終了
あと、依緒スレに続編(かずさといおたけ)書いた後、また千晶書きます。たぶん。

ご意見、ご要望お待ちしています。

214 名無しさんだよもん 2013/03/19(火) 03:19:18.68 ID:vSIzeO220
>>197-
場面が結構切り替わるのでちょっと混乱しそうになった

「――わたしも娘の敵討ちにアタックしちゃおうかな?」
上段になってないです曜子さん
いや、いっそこうなったら雪菜から寝取っちゃいませんか!
適当に楽しんで飽きてきたら娘にポイッと・・・うん、さすがにないですね、すみません;;

ちなみに投下されてたこと今の今まで全然気付いてなかったとか何とか

215 名無しさんだよもん 2013/03/19(火) 03:31:34.06 ID:vSIzeO220
>>210-
仲直りの記念写真
もし2人そろってピースとすしてたりした日には完全にキャラ崩壊 ・・・あ、ありえねぇ (( ;゚Д゚)))ガクブル
むしろ腕組みしたまま背を向け合ってツンケンみたいな方がイメージ的には合ってるかも

「千晶かわいいよ千晶」
 なでなで

・・・爆笑したwwww

そして確信した、これはかずさの冒険英雄記なのだと
で、次の獲物は依緒ですか
曜子さん、武也なら誘惑しても娘さんはきっと文句言いませんぜ!(呆れ返るだろうけど)

216 名無しさんだよもん 2013/03/19(火) 08:39:52.87 ID:Pmkkzmgu0
>>215
>>記念写真
多分、千晶の方は微妙な顔してるでしょうねw

>>「千晶かわいいよ千晶」
元ネタ知りませんが、このスレリスペクトで入れました。
ご笑納いただけ何より。

>>冒険英雄記
ご指摘のとおり。千晶は最初に仲間になる魔法使いでしょうね。

>>依緒武也
依緒との経緯は依緒スレに一部
投下済みです。(加筆修正予定ありますが)
次に武也エピソードありますが、投下先未定。
千晶も絡みませますが。
曜子再登場は暫く予定なしです。すいませんw

217 名無しさんだよもん 2013/03/20(水) 21:45:09.19 ID:Abg6vteS0
と、イオタケまとめているうちに、春希と曜子のネタ思い付いてしまった。さて、千晶絡まないし、どこに投下しよう…

218 名無しさんだよもん 2013/03/21(木) 10:27:35.24 ID:OFCW53iJ0
>>217
春希スレは?

219 名無しさんだよもん 2013/03/21(木) 13:31:26.93 ID:4Vskl5vs0
>>218
おお、春希スレがあったか。
さっそく投下しました

 しかし、いろいろなスレに投下してそろそろ訳のわからないことになりつつありますね。

 一段落ついたらSSのwikiに投稿します。

220 名無しさんだよもん 2013/03/23(土) 16:19:03.54 ID:OaNl3/5w0
ちまちまやってたPS3版今終わったけど、やっぱり千晶√が最強すぐる
Codaひと通り終わったあと、気づいたら最後に千晶Trueもう一周してた

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira144582.jpg (画像)

221 名無しさんだよもん 2013/03/23(土) 19:28:16.80 ID:ujFR08vf0
夏の千晶イイなぁ

222 名無しさんだよもん 2013/03/24(日) 20:59:50.91 ID:xnhROo7p0
懲りずにSS投下
前話の1週間後、かずさ誕生日
かずさの暴走&千晶泥かぶりといく予定です

223 名無しさんだよもん 2013/03/24(日) 21:01:57.18 ID:xnhROo7p0
**********5月28日(金)冬馬邸

「誕生日おめでとう〜っ!」

ぱんぱんっ

 今日はかずさの誕生日。
 曜子に美代子、武也、依緒、春希、雪菜、そして、かずさの新しい友達である千晶が冬馬邸に集い、彼女の24の誕生日を祝った。

「…で、何でおまえがこんな所にいるんだ? 和泉」
「和泉? 長瀬さんじゃなくて?」
 春希と雪菜が千晶を見て言う。
 武也と依緒は千晶の正体を知っていたが、本人なりかずさが説明するだろうと思って静観していた。

「ああ、千晶は私の友達だ。こないだ知り合ったんだが、付属の同学年、武也のクラスだったそうだぞ」
 かずさの説明は通り一編の内容から始まった。

「春希とも大学3年生の時同じゼミだったそうだな。もっともこいつは留年したらしいが」
「実はそうなの〜。ゴメンね、春希。ちょっとサークルが忙しくなって」
「…お、おう…」
 春希は説教の一つもくれてやりたかったが、今日の主役の前で二年前の話を蒸し返すのもなんだと思ってここでは控えることにした。

224 名無しさんだよもん 2013/03/24(日) 21:03:00.94 ID:xnhROo7p0
「去年の春晴れて卒業。劇団『コーネックス二百三十度』で舞台女優『瀬之内晶』として頑張ってる…わたしとも劇場で会ったんだ」
「…和泉ってそんな才能あったのか」
「そ〜なの〜。これからの千晶の活動にご期待くださいっ」
 とりあえず、春希の『千晶はどこでなにしてた』という疑問は解消された。

「…長瀬さんじゃなくて?」
 この時点で未解決なのは、雪菜の『彼女は長瀬晶子っていうんじゃない?』という疑問だったが、かずさはそこは流すことにした。

「まあ、千晶については色々あるが、その前にお前たちに追究したいことがある」
「?」
「これはなんだ?」
 かずさが指したテーブルの上には大小のプレゼントの箱があった。中身はどれもかずさの好みをおさえていた。
 問題はその通奏低音たる要素であった。

225 名無しさんだよもん 2013/03/24(日) 21:04:34.96 ID:xnhROo7p0
 美代子からはパティスリー・コアンドルの焼き菓子
 千晶からは福間屋のカステラ
 依緒からは鈴々屋の和菓子
 武也からはRIKUDOHのショコラ・アラカルトだった。

 24歳の誕生日のプレゼントがスイーツオンリーという事態は避けたいと皆思っていた。

 しかし、雪菜からは手作りのベイクドチーズケーキだった。
「…甘さは控え目なんだけど…」それが何のなぐさめになるというのか。

 残すは春希のプレゼントのみとなった。
 皆、最後の希望を託した。

「甘いものがかぶる事態は想定していたから…」
 皆、期待した。

「日持ちのするものにした」
 皆、落胆した。
 春希からは堤政伸シェフの高級ジャム詰め合わせだった。

226 名無しさんだよもん 2013/03/24(日) 21:05:34.62 ID:xnhROo7p0
「…お前たちの気持ち、ありがたく受け取っておく…」
 せめて、誰か一人でも外してくれればここまで微妙な雰囲気にならなかっただろうに…

 と、そこで以外なところから助け舟が出た。
「あら、わたし以外甘いもの持ってきたんだ」
 さっそくそちらへ話題転換を図る春希
「あ、曜子さんのプレゼントは何だったんですか?」
「っ! 待て」
 かずさが制止する間もなく答える曜子
「トライアンフの下着よ。確認してあげる?」
「………」
 助け舟は泥製だった。
 別の意味で気まずい雰囲気が場を包んだ。

227 名無しさんだよもん 2013/03/24(日) 21:06:44.39 ID:xnhROo7p0
<ぽーん>
 ども、しばし歓談の後、修羅場いれます。

228 名無しさんだよもん 2013/03/26(火) 19:14:33.05 ID:ufCvLMBw0
ども、毎度スレ汚しすまないっす
SS

229 名無しさんだよもん 2013/03/26(火) 19:15:08.61 ID:ufCvLMBw0
 雰囲気を打破したのは依緒だった。
「先週はコンサート良かったよ〜」
「そういえば依緒と千晶は見に来てくれたな…そう、千晶なんて全部来てくれてるんだ。一回も来ない薄情者は…おや? まだいたかな?」
「あはは…ゴメンね」
「悪い…かずさ…」
「気にする事はない。これから何度も日本でコンサートやるんだからな。美代子さんに言ってくれれば席押さえるよ。雪菜」
 かずさの機嫌がどうやら上向きになりつつあるのを見て、一同胸をなで下ろした。
「ありがとう、かずさ」

「開桜社も春希みたいなぺーぺーに回す関係者チケットないみたいだな。自前で入手してくれ」
「…はは。了解」
 武也がさり気なく突っ込む。
「自腹切って観賞しないと、春希のやつ寝かねないからな」
「うっ…武也〜。この〜」
 一同笑いをこぼす。

230 名無しさんだよもん 2013/03/26(火) 19:17:01.82 ID:ufCvLMBw0
「と、場がくだけたところで、重大発表です」
 武也がかしこまって語り出す。
「え〜、この度、冬馬かずささんは弊社アンピトリテ社のCMに出ていただけることになりました」

「えっ? すごいじゃん冬馬〜」
「かずさすごいよ〜」
「ってことは、かずさのテレビデビューか!」
「ひひひ〜。すごいね〜。ねぇねぇ、儲かった?」
 興奮する一同

 しばし、みなでCMの話で盛り上がる。
 そのうち話は『今どんなCMやってたっけ」という話になり、テレビがつけられた。

「格安結婚式はヤス婚。自己資金18万円から」
 一気に場が凍りついた。この場の誰もが春希が雪菜と婚約し、かずさが失恋したことを知っている。
 二人の結婚式の話もこの誕生会の場では触れずに済ましたいのが皆の共通認識だったが、さすがにこの状態で流すのは無理がありすぎる。

231 名無しさんだよもん 2013/03/26(火) 19:18:13.97 ID:ufCvLMBw0
 ええい、ままよ
 どのみちいつかは話さない訳にはいかない。
 かずさは意を決して口を開いた。
「雪菜たちはさ、もう式場とか決まったのかな?」
 自分で思ったより自然な声が出せてかずさは安心した。

 雪菜も落ち着いて返事する。
「もうすぐ決まりそうなんだけど、なかなか決まらないの、年内にはと思っているんだけど…」
「そうか…なら一つ条件がある」
「? 何?」
 かずさは得意げに言った。
「披露宴会場にはピアノを用意してくれ。アップライトじゃないやつ。二人の顔がよく見える位置にさ」
「それって…」
「ああ、祝福させてもらうよ」

 雪菜は涙目になって喜んだ。
「あ…ありがとう、かずさ…」
「ありがたく思え。普通ならギャラふんだくるとこだが、貧乏物書きを破産させる趣味はないからタダでやるさ」
「…恩にきるよ、かずさ…」
 春希も感涙していた。

232 名無しさんだよもん 2013/03/26(火) 19:19:59.58 ID:ufCvLMBw0
<ぽーん>
千晶巻き込まれるシーンまでいきませんでした。次回までお待ちをば

233 名無しさんだよもん 2013/03/27(水) 12:46:24.82 ID:q4EYgQHz0

234 名無しさんだよもん 2013/03/27(水) 12:47:24.31 ID:q4EYgQHz0
「ねぇ。ドレスは決まったの?」
「まだなの。『コレ!』って思ったやつはサイズ合わなかったりしてさぁ…」
「幸せ太り?」
「まさかぁ。やめてよ」
「…もしかして、授かり?」
「もぉ! 依緒ったら。そんなことならないように最近は気をつけてるよ…」

 その時だった。

 どぼどぼどぼ…ごくごくっ

 かずさが手元のジュースを乱暴にコップに注ぐや否や一気のみをしたのだ。
 かずさの雰囲気が一気に冷たいものに変わっているのに誰もが気づいた。
 目つきが明らかにおかしく、不機嫌さをあらわにしている。
 原因はわからなかったが、何とかせねばと皆考えた。

 ここで空気を読まず呼びかけたのは春希だった。
「か、かずさ?」
 しかし、かずさは怒りに満ちた目で春希をにらみ返す。その口が開きかけ、春希に噛みつかんと言葉を探しているのがありありと見て取れた。

235 名無しさんだよもん 2013/03/27(水) 12:50:26.11 ID:neh/W4Rw0
 …ここは『ジュースリセット』いくか? …ちっ

 千晶が考えたのは、まずいことになる前に『ワザとジュースをこぼして場を切る』荒技だったが、生憎、手元にはわずかに残った缶ビールしかなかった。

 初手を打ったのは会話のイニシアチブを持っていた雪菜だった。
「あ、そうそう。わたし、千晶さんに質問あったんだけど、いいかな?」

 ナイスぶったぎり! 千晶ほか若干名は心の中で快哉をさけんだ。
 しかし、そこでかずさの爆弾が爆発した。
「…千晶のことは春希に聞いたほうがいいんじゃないか? 何せ、二人は『寝た』仲なんだし」

 千晶は毒づいた。
 まったく、厳しいアドリブ要求するよ。
 千晶が観察するに、武也、曜子を除いて注目は自分、これはよし。
 問題のかずさはさすがに『まずいことを言ってしまった』との表情が顔に浮き出ているが、これもまあ仕方ない。
 問題は落としどころだが…今日はかずさの日だし、わたしが泥かぶるか…

236 名無しさんだよもん 2013/03/27(水) 12:51:37.98 ID:neh/W4Rw0
「わったたたっ! かずさ。それはかずさからかっただけで、違うんだよ〜」
 すかさず慌てたフリをして返す千晶

 そこで、かなり強ばった声で雪菜が聞いてきた。
「千晶…さん?」
「ほい? ナニ?」
「先一昨年の末、春希君の携帯に夜中電話かけたら女の人が出たことあったんだけど…あれ、千晶さんだよね?」
 春希は硬直した。

 よし、食いついたっ。
 千晶はちょっとだけすまなさそうなふりをして答えた。
「そ〜なの。実は、わたしも昔春希のこと狙っててさ〜」
「いっ! …ち…千晶」
「…ゼミのレポートの手伝い名目で春希の本丸侵入完了って、喜んでたけど、春希のやつ全然私のゆ〜わくに引っかからないんでやんの」
「え? …ち、千晶、そんな…」
「ほら、こんなふうにこの朴念仁全然気づいてな〜い」

 千晶はここで全員の視線を再確認。
 ほぼ全員自分を注視。雪菜と依緒の視線は怖い。かずさはうつむいているし、武也はそんなかずさの様子を見ている。…問題なし。

237 名無しさんだよもん 2013/03/27(水) 12:52:48.67 ID:neh/W4Rw0
「そうなんだよな。春希と雪菜ちゃん、はやくくっつかなかったから、周りで勘違いして被害受ける奴多かったこと。
 …おやおや、ここにも被害者いたとは…春希だけでも片手で数えられないんじゃね?」
 武也っ。援護射撃さんきゅっ。…あとは『長瀬晶子』の後処理もしておくか…

「ねえ、雪菜ちゃん。『長瀬晶子』って覚えてる」
「え…やっぱり…」
「あれ実は変装したわたし。いや〜、春希の彼女ってどんなヒトかって確かめずにいられなかったんで…会ってビックリ、ミス峰城大付三連覇の小木曽雪菜? なにその彼女いないいない詐欺は! って打ちのめされましたよ。わたしは〜」
「………」
 雪菜も春希ももはや声も出ない

 千晶は両手を合わせて『お願い』のボーズで締めにかかる。
「てなわけで、和泉千晶も諦めてお二人のコト祝福させてもらいます。いいかな?」
「ははは…ありがと…」
「…了解…」
 怒ることもできずに納得する雪菜と春希
「………」
 怒っているものの何も言えない依緒

238 名無しさんだよもん 2013/03/27(水) 12:53:46.97 ID:neh/W4Rw0
「てなわけで、かずさもごめんね。わたしと春希は実は何でもなかったの。かずさからかってただけなの」
 ここで、ようやく本日の主役にバトンを返す千晶。
「…あ…ああ、いいよ…」
 かずさは、ものすごくすまなさそうな顔でうなづく。

 武也は、呆れたふりをしてかずさに言った。
「冬馬、やはりお前、友達もう少し選んだほうがいいわ」
「…はは、どうも。部長」
 かずさの顔は引きつっていたが、落ち着きは取り戻したようだった。

 その後は大学の卒業旅行の話など当たり障りない話で盛り上がり、誕生会はひとまずお開きとなった。

239 名無しさんだよもん 2013/03/27(水) 12:55:14.36 ID:neh/W4Rw0
<ぽーん>
次回、千晶がお説教?モードでかずさ苛めます。

240 名無しさんだよもん 2013/03/29(金) 18:17:53.84 ID:/3OIXhW30

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